カイゼン4 製作方法のカイゼン

トゥールビヨンのテンプ、アンクル、ガンギの入る穴石は、上下がぴったりと合っていないと時計は動かない。
また、穴石が入る穴の間の距離も、かなりの精度が要求される。
極論を言うと、各穴の距離さえ合っていれば、他はダメダメでも時計は動く。ちなみに縦距離(アガキ)も重要だが穴石の移動で調整可能なのである程度融通が利く。
つまり、穴石間の距離は、最も重要な要素なのだ。

最初は上下の穴を個別にCNCの切削で開けていたが、まったく上下が合わなかった。

少しカイゼンし、アンクル、ガンギの穴は、片方の穴はCNC切削中で開け、もう片方の穴は、部品を組み立てた状態で、開いた方の穴をアンナイにボール盤で穴を開けていた。
また、テンプの穴石の入る穴は、時計旋盤にキャリッジを固定し、かなり強引な方法で穴を開けていた。
これで上下のズレはカイゼンされたが、それでも穴石間の距離は計通りにならない。

キャリッジに最下部のパーツをジグに接着剤でがっちり固定して加工する。加工後、そのパーツは外さない状態で、キャリッジの組み立てをし、CNCを手動送りして穴をあける。
まず下穴を開け、CNCのXYは一切動かさず、Zだけ動かし、部品を組み立て後に上穴を開ければ、上下は完全に一致するはずだ。

ほとんど全てのカイゼンは、先日ご紹介した浅岡氏のSNSから得た情報である。
本場スイス人でさえ、こんな詳しい情報を公開している人はいない。日本人に生まれてヨカッター。

カイゼン3 設計のカイゼン

トゥールビヨンキャリッジの設計は、ネットの情報をもとにオリジナルで設計していたが、設計を大幅に見直す。

今までの設計は、精度より加工しやすさを優先していた。
CNCの加工部分は、0.6mm厚の板だけで済ませ、立体的なでっぱり部分は時計旋盤で別途加工して圧入していた。
当然CNCの加工は片面加工のみ。
しかし、これでは十分な精度が出ない。

片持ちのフライングトゥールビヨンはやめて、両持ちにする。
これは精度ではなく見た目のカイゼン。フライングトゥールビヨンは中華ビヨンっぽいイメージがあるので(笑)

キャリッジの柱部分などのでっぱりは、CNCで一体で切削する。
最下部の部品は、両面加工に挑戦する。そのためのジグも設計する。

設計は相変わらず2次元CADですが・・・

カイゼン2 加工パスのカイゼン

フライス加工する際、荒削り→仕上げ削りをするのが一般的だ。
そんな超基本的なことも知らず、ほとんど荒削りだけで加工していた。
一応、フライス盤に関する書籍を1冊斜め読みしていたが、全く頭に入っていなかったようだ(爆)

荒削り段階では、材料とエンドミルの両方に大きな負荷がかかり、材料は削られるのイヤイヤと歪み、エンドミルは削るのイヤイヤと歪む(爆)
だから設計通りの加工できないのだ。
ほとんど負荷のかからない状態で、仕上げ削りを行えば、正しく加工できる。
最後にゼロカット(削りシロゼロ)を行う。
ゼロカットは、意味が無いように思えるが、仕上げ加工でも、両者の歪みは若干あるので、それを是正するために必要なのだ。

以前、キャリッジの柱部分が上にいくほど細く加工される問題をこのブログで書いたが、これも加工パスを見直すことでカイゼンされるはずだ。
荒削り→仕上げ削りを繰り返しながら掘り進めることで、細くなる問題が解決できる。

何千万円もする強固なマシニングセンターでも、エンドミルと材料の剛性は、私の15万円のCNCと同じなので、きっと同じ問題が発生するだろう。
そう考えると、マシニングセンターさえあれば、精密加工はカンタンというわけではなさそうだ。
むしろ、加工パスを自動生成するソフトウェアで優劣が出るだろう。
つまり、それくらい加工パスは重要だと言うことだ。

ちなみにこれはカイゼン前の加工パス。

カイゼン1 ワーク(材料)の固定方法のカイゼン

今までは、材料(ワーク)の固定は、捨て板となるPOM板の上に両面テープで固定していた。
さらに、ベースの捨て板(POM板)も、テーブルの上に両面テープで固定していた。
また、材料はチップソーで切断するのが大変なので、大きいまま使っていた。
こんな感じ

CNCの加工精度を低下させる原因の1つとして、材料の振動があることが分かった。
POM板や両面テープは、やわらかい素材なので、材料の振動が大きいだろう。
言わば、座布団の上に材料を乗せて加工しているようなものだ。
また、材料を大きいまま使うのも、振動を増幅させているように思う。

カイゼン策として、捨て板は、POM板をやめて、真鍮板とする。テーブルへの固定は両面テープではなくネジでしっかり固定する。
また、捨て板と材料の接着は、両面テープをやめて、瞬間接着剤で固定する。瞬間接着剤は、ロックタイト金属用とし、接着時はバイスで強く圧迫する。材料は大きいまま使わず、ちゃんと切断する。

これは加工精度とは関係無いのだが、キャリッジの材料は、真鍮をやめてジュラルミン(A2017)にする。
日本人としては、超々ジュラルミン(A7075)を使いたいところだが、薄い板は売っていないようなので、今回は見送った。

とりあえず、いろいろ準備は進めている。

WEBクロノス

私が勝手に師と仰いでいる浅岡肇さんの初期のSNSを発見した。
webChronosのSNSにあり、会員登録しないと見られないサイトなので、いままで発見できなかったのだ。
会員登録は無料なのでぜひ。

今まで彼のfacebookや、メディアの記事、書籍ジャパンメイドトゥールビヨンなどを読み漁っていたが、時計製作のノウハウに関しては、いずれも断片的な情報であり、時計製作がイチから分かるものでは無かった。

webChronosのSNSにある彼の投稿は、かなり詳細にイチからトゥールビヨンの製作方法が記録されており、私にとっては国宝級に値する情報だ。
最初の投稿は2008年。今から約10年前だ。今の私の年齢に近く、子供のこととか親近感のわく投稿もある。

2週間くらい前に発見し、毎日の通勤電車の中で読むことが日課になっている。
目からウロコが落ちまくりで、改めてすごい人だと思った。
ここで得た情報をもとに、製作方法を大幅に見直したいと思う。

CNCのスピンドルモーターを交換する-4

CNCのブログみたいになっているが・・・一応時計関係のブログです。

新しく購入したスピンドルモーターは48V、400Wと高出力なので、基盤についているちっこいリレーだと不安なので、外部にリレーを増設することにした。

オリジナルマインドの資料を見るとSSR(ソリッド ステート リレー)が良いみたいなので、アマゾンで購入。しかしチャイナ発送で2週間たっても届かない・・・。

なぜかオムロンのリレーが家に転がっていたので(笑)これを使う。
回路図はこんな感じ。前々々々職が電気関係なので・・・電気はちょっとだけ得意なのだ。
補足:図のCNCボードの結線に誤りあり、実際はgndではなくMO+とMO-に接続する。

左側は今回増設したオムロンのリレー。右側が基盤に付いているちっこいリレー。

速度コントローラは裸だったのでとりあえず箱に入れた。

スピンドルモーターの試運転をしてみた。
すごいパワーと回転速度だ。
パワーをMAX近くにすると、さすがにベルト駆動では回転が追いつかないようだ。
パワーを60%くらいにするだけで、感覚的に2万回転くらいはいってるように思う。(交換前のモーターが1万回転と想定しての個人的感覚)

次にCNCの手動送りで、ドリルで穴を開けてみた。
全然穴が開かない。何かがおかしい・・・。
よくみたらモーターの+-が逆で逆回転していた・・・オイオイ電気は得意なんじゃないの?
+-を入れ替えて無事試運転が完了。

エンドミルによる切削はまだ試していない。

セイコー スポーチュラ クロノグラフ 9T82-0A70

ジャンク品のセイコー スポーチュラ クロノグラフ 9T82-0A70をヤフオクで5万円くらいで購入した。
ジャンクの原因は、発電しても2ステップ秒針で動き、すぐに止まるで、2次電池(キャパシタ)の交換で簡単に治るだろうと軽く考えての購入。

もちろん、自分で2次電池を交換するつもりだ。
ネットで調べたが、Cal.9T82の2次電池交換の情報が皆無だ。書いたら消されるのだろうか(笑)

とりあえず裏蓋を空ける。
なかなか美しいムーブメントだ。
横から見ても、電池らしきものは見当たらない。

続いてローターを外す。
まだ電池は見当たらない。

じょうがないので受けを外してみた・・・
げっ・・・ものすごく複雑な機械が・・・これ以上分解したらダメなやつだ(爆)
そのままそっと受けを戻したのは言うまでもない(笑)

セイコーの時計はネットで修理が申し込めるので試してみた。
https://www.seiko-watch.co.jp/support/repair/contact.php
手続きは簡単だ。
すぐに予想見積価格も分かる。OHと2次電池の交換で料金は25000円くらい。
あの複雑な機械を考えると激安だ。

数日すると配送キットが送られてくる。
箱を組み立てて時計を入れて送り返せばOKだ。

まだ時計は届いていない。

CNCのスピンドルモーターを交換する-3

スピンドルモーターを取り付けてみた。
想定外だったのは、スピンドルモーターに付いているER11が外れないこと。
かなり強く圧入されており、びくともしない。
無理に外そうとすると壊しそうなので、このままでいく。
柱を延長することで、なんとか取り付けできた。
電圧を調整するダイヤルが届かないので試運転はまだだ。

CNCのスピンドルモーターを交換する-2

スピンドルモーターにはER11が付いているので、プーリーを介さずに直接取り付けてもよいが、せっかくプーリーで3倍速にできる仕組みになっているので、12000回転×3倍、夢の36000回転?になるよう設置してみる。
まぁ中華製なので、実際は10000回転くらいまでしか回転は上がらないだろうが、それでも十分な回転速度である。
ただスピンドル部分の耐久性が未知数なのと、ベルト駆動でそこまでの回転数に耐えられるのか不明・・・。

現在CNCに付いている金具では、中華製のスピンドルモーターは取り付けできない。
金具を加工してもよいが、「やっぱりだめじゃん」となった場合、現状復帰ができなくなるので、新たに金具を作成することにした。
金具の材料は4mm厚のアルミ板だ。CNCで加工できる大きさを超えているので、残念ながらCNCで切削できない。
糸のこで切ってもよいが、手が痛くなりそうなので(笑)、アルミの加工サービスを利用することにした。
きりいたドットコムというサービスを利用した。
現行の金具をノギスで計測して、CADでさらっと作図する。
そのデータを送るだけで、加工してくれる。加工はレーザー加工で切り抜くらしい。
値段は送料込みで4,000円弱。オーダーメイドにしては安いと思う。

注文してから10日後に届いた。
公差は±0.5mmとのことだが、かなり高い精度で加工できている。
元の金具とサイズはぴったりだし、スピンドルのネジもぴったりだ。
アルミだけでなくステンレスの切り抜きもできるので、時計のミドルケース製作のベースにも使えるかもしれない。
もっとも、加工は切り抜きだけなので、いろいろ加工は必要だが、板からつくるより楽になる。

左が今回作成した金具、右が元の金具 モーター取り付け部分が異なる。

CNCのスピンドルモーターを交換する-1

現在、スピンドルに使用しているモーターは、日本電産サーボのDME44SAで、スペックは、9.2W 12V 3600回転 である。
メイドインジャパンで品質は良い。
これをプーリーで3倍に増速しているので、理論上は10800回転である。

時計の部品をつくるのに、スピンドルの回転数が10800回転では、十分とは言えない。
エンドミルは、その構造上、刃の中心にいくほど刃の切削速度が遅くなり、恐ろしいことに中心部分の切削速度はゼロなのだ。
0.2mmなどの極小エンドミルは、全体が中心みたいなものなので(笑)、スピンドルの回転速度を上げないとまともに切削できない。

高速回転するスピンドルモーターは、ナカニシのスピンドルモーターが良いようだが、値段は安くても15万円くらいするし、別途5万円くらいするインバーターも購入しないといけない。貧乏リーマン(笑)の私には無理だ。

アマゾンで中華製のスピンドルモーターが6,000円くらいで売っているので買ってみた。
スペックは、400W 48V 12000回転である。従来使用していたモーターとは比べ物にならないパワーと回転速度だ。
48Vの電源も購入した。あと電圧を調整するダイヤルも購入した。これらも中華製で爆安だ。
ものづくり大国、中国の勢いを感じる。